世の中が目まぐるしく新しいコンテンツで更新され続けていく中で、継続したファンを獲得、キープし続けることは何とも難しい。
特に最近は真新しいもの、面白いものを常に求めようとするあまり、5年前なら軽く数年は擦りつづけられるであろう”良いコンテンツ”も2週間もすれば過去のものだ。
そんな中で、僕が1,600時間もやり込んだFPSゲームが2025年8月にサービス終了してしまった。

それはIronsight(アイアンサイト)というゲームだ。
2016年にローンチされて以降、2019年に開発がWiple Gamesに移行しSteam版がリリースされ、「近未来CoD風無料FPS」として当初は数々の実況者がこぞってゲーム実況動画を投稿したものだ。
覚えてるか?この6年前の動画を。
僕もこの動画を見て初めてこのゲームを遊んだ覚えがある。
Fields Foodさんという、強いて言えば謎ゲーやインディーゲームばかりを取り上げて実況している方だ。恐らく日本人口が爆増したのはこの方の影響がかなり大きい。
ゲーム性

一言でいえば「古き良き時代のCoD」。シンプルな地上戦FPSでスコアストリークを駆使しながら戦うシンプルなゲーム。
壁ジャンやストレイフみたいな難しいムーブメントも無ければPAD非対応なのでエイムアシストのような理不尽に殺されることもない真のキーマウのためのFPSだった。
さらに過度なVisual Clutterも無く、視認性も悪くない。そして何より動作が軽い。
俺が求めていたFPSはこれだと言わんばかりにドはまりした。

(だからって、サービス開始当初からHPゲージが数値も出ずに常時表示されるわけでもないこれ↑だったのはどうかと思うが)
とにかくシンプルで遊びやすくて楽しい。本当に良いゲームだった。
戦績
総合+TDM

2019年からプレイを始めて、当時はキーマウFPS歴ゼロから始めたにしてはかなり奮闘したと思う。
当時はK/D 0.4から一度も戦績リセットすることなくここまで来たと思う。

ちなみにプレイ時間は665時間とあるが、Steamのプレイ時間ではちゃんと1600時間と記録されている。
ゲーム内のプレイ時間はインゲームのみの時間を記録している。いかにこのゲームでマッチしない待ち時間があったかが分かるだろう。
サーチ&デストロイ

まだIronsightに活気があった頃はサーチ&デストロイ(通称SnD)と呼ばれる爆破モードもあった。
所謂「競技シーン」で採用されるようなモード。実際にこんな小さいゲームでもランキングマッチやクランマッチ、賞金付き大会なんかも開催されていた。
初めて3か月ぐらい経った頃に、無料FPS特有のトキシックにドカ煽りされて悔しくてめっちゃ練習したのを覚えてる。多分あの人たちが居なかったら今の僕のゲームの上手さは無かったと思う。
実は世界一位になっていた

こんなピンとこない戦績でも、頑張って世界一位タッチしたことがある。
「チームスナイパーマッチ」と呼ばれるTDMのスナイパー限定モードで全リージョン含めて1位になった。当時からいつサ終してもおかしくない雰囲気があったので、何か爪痕を残したいと思って初めてここまでやり込んだ。

ただ期間途中で初めてチームスナイパーマッチの世界リーダーボードTOP10の報酬が公開されてこの謎の金仮面↑だったことに絶望して残り期間2週間を残してプレイをやめた。マジでこれはないだろ
それでも最終順位は十何位だったはず。良くも悪くも思い出に残った。
アジア2位 八百長事件

余談として、実はこれよりも前にSEIZEという当時アジア2位の韓国クランでプレイしていたこともあった。
5年前ぐらいの話なので流石に何も残っていないが、ちゃんとランクマッチで選抜としてプレイしていた。



当時はクランマッチというクランメンバー5vs5でサーチ&デストロイで戦うモードが盛んに行われており、そこでSEIZEが2度も八百長プレイで不正にポイントを取得していた事件があった。
僕は直接八百長に関与したことは無いが、僕が所属していた同時期に裏でこの事件が起きた。
これを自分のTwitterで日本語でツイートしたら、SEIZEの副リーダー?みたいな人にめっちゃ監視されてたらしく、そのまま追放された。今でも理解できない。
ちなみにSEIZEのリーダー(Siz.Aim)はめっちゃいい人。副リーダーの職権乱用で半強制的に追放された後に「うちの副リーダーがごめんなぁ、俺が説得しようか?」って言ってくれたぐらいいい人。ごめんなAim。
スキンと課金
課金総額

Steamの購入履歴を元に、Grokに計算してもらったら俺はこのゲームに10万円も使っていたらしい。信じられん。
特に2019年~2021年なんかは高校生~専門学生2年生ぐらいの一番お金がない時だ。この当時の10万円なんか今でいう100万円ぐらいの価値がある。何てことをしてくれたんだ本当に。
でもスキンが魅力的だったのは否定できない。僕が愛用していたスキンを色々綴らせてほしい。
ターコイズ M4 ACC-M & DSR-1


当時一つ1万円もしたスキン。それが二つ。ありえねー。

プラチナムパックと呼ばれる詰め合わせパックみたいなやつに含まれる限定スキン。当時はとてつもなく魅力的だった。にしても一つのスキンに1万円は高過ぎじゃないか。
それがM4用のARパックとDSR用のSRパック。合わせて2万円。
もちろんマーケットプレイスなんかも無いので売ってまたお金にするなんてことも出来ない、買ったら最後の廃課金用パックみたいなやつ。当時のジリ貧の中で何とか捻出して買った覚えがある。
多分売れなくなったのか最後には40%オフされて6千円で売られてた。悲しい。
でもなんやかんや言ってこのスキンは最後の最後まで愛用してたしデザインもかなり好き。
そしてリロードアニメーションが特殊なので使ってて楽しかった。でも高いよ。
ラグジュアリーオールドマン AK-47

通称3万円AK。そう、このスキンだけに3万円溶かしているのである。
このゲームにはパックだけでなくガチャシステムもあって、これがまあ闇に近い。
天井は存在しているが100パック引かないといけない。1パック約300円で100パックなので3万円。
新年早々のウィンターイベントみたいなやつで登場したこのスキンだが、当時の僕はどうしても欲しくて抑えきれなかった。
多分僕のアカウントで所持していたスキンの中で一番金を吸ったスキンだと思う。それぐらいコイツは凶悪だった。

サイト無しでADSしたときのアイアンサイトの形状が見やすかったり、Pay to Winスキンではあったのだが、流石に3万円はやりすぎた。反省してほしい。
チェリーブロッサム AUG A3

↑の3万円ガチャの副産物として手に入れたのだが、結局全ての武器スキンにおいてこの武器とこの武器スキンを一番使ったと思う。3万のAKを差し置いて副産物を一番使ったという何とも皮肉な話だ。
にしても桜をモチーフにしたデザインでなんとも可愛くカッコよく好きだった。
全スキンの中でもダントツで好きなスキンだと思う。
さらに当時はAUGが最強武器で、とりあえずAUGを持っておけば勝てるみたいな一強環境だった。
余りにも強すぎてナーフされたが、それでも尚普通に強い武器として最後まで活躍し続けた武器。とてもお世話になりました。
…と他にも語りたいスキンは山ほどあるが、多分100ページあっても足りないのでTOP3だけで抑えておこうと思う。
10万円かけても、サ終すると本当に何も残らない。
勿論一気に10万円支払った訳でもないし、正直実感は無いのだが金額だけ見るとぞっとする。
なぜIronsightはサ終したのか
人口減少
Ironsightがサービス終了してしまった一番の理由は人口減少である。無料FPSとは言え、明らかにプレイヤーが少なすぎた。

リリース初日は約5,000人同接を記録したものの、そこから着実に人口を減らしながら細々と息をしていた。

リリースから1年足らずで人口は1,000人を切り数百人が当たり前の世界に。
ただ、この当時はほとんどがアジアプレイヤー(日本・韓国)だったため主要モードのマッチ待機時間は1分もかからなかった。まだまだ快適に遊べている。

2020年に突然人口がまた1000人単位になり息を吹き返したかと思われるが、これは別に人気になったわけではない。

Steam版よりも早くにリリースしていたAeria Games版がサービス終了しSteam版に統合されることになったため人口が増加した。
と言いつつも流れてきた人数が500~1000人であることを鑑みるとAeria Games版でもさほど人口は居なかったものと思われる。

そこからというもの、若干の上下はありつつも着実に人口減少は続き、最後は200人にも満たない限界集落のままサ終を迎えた。
これだけを見ると「なぜIronsightはサ終したのか」というより「なぜIronsightはサ終せず耐えてたのか」のほうが表現的には近いが、ユーザー目線から見ても様々な点で限界を迎えていたのは察しがついていた。
日本サーバー消失
2024年7月
恐らくサーバーの維持費を賄えなくなり、日本サーバーが消失した。

それまで
サーバー名 | ロケーション | Ping |
ASIA | 日本・韓国 | 10~50 |
SEA | シンガポール | 70 |
EU | ドイツ・フランス | 130 |
NA | 西アメリカ | 220 |
SA | ブラジル | 270 |
と5サーバー程あったが、この突然のアップデート以降
サーバー名 | ロケーション | Ping |
ASIA | 韓国 | 50 |
EU | ドイツ・フランス | 130 |
NA | 西アメリカ | 220 |
と3サーバー(多分)まで減り、ここで一気に日本人プレイヤーが居なくなったように感じた。
サーバーの維持費が支払えなくなったのか、そもそも5サーバーを必要としないほどユーザーが減ったのか。
この辺りから、生き残ったIronsight日本ユーザーは色々と察しがついていた。サーバー数が減ったらそのゲームはサ終が近いと思っていいと思う。
新規コンテンツ開発中止

2024年9月
一時期はバトルパスや購買報酬など月1ペースぐらいで新しいコンテンツが追加され続けていたが、2024年9月にとうとう新しいコンテンツの開発が中止に。
これ以降は今までのイベントの復刻や使いまわしがメインとなり、目新しいものは全くなくなった。
恐らくこの時点で開発資金が足らなくなったか、スタッフが辞めてしまった等で開発困難になったものだと思われる。
とにかく一番の問題は「プレイする人が居ない」こと。
プレイする人が居ないからお金がない。お金がないからスタッフを雇えない。こんな感じの負のループでとうとう2025年5月にサ終を発表した。
Ironsightの一番の失敗はマーケティングだと思う。
特に広告やインフルエンサーへの告知依頼などが足りなかった。だから2019年ではIronsightの事を知っていた人も今となっては「ああそんなゲームもあったなあ」程度だし、Ironsightの事を全く知らない人からすれば、知る機会そのものが無いのだ。
2023年ぐらいから既存プレイヤーは散々広告出せって言ってたけど、多分広告に回す資金すら捻出することも難しかったのだろう。多分当時からもう色々と手遅れだった。
新しいコンテンツを出すより、今あるコンテンツを維持することで精いっぱいだったのだと思う。
実はエンドクレジットに名前が載っている
Ironsightサ終後、ディベロッパーのWiple GamesからとあるNotionサイトへのリンクが公開された。

これはIronsightの開発に携わった方の名前が記載された本当に最後のエンドクレジットだった。
改めて見ても、ゲームの規模に対して携わった人数が本当に少ない。少数精鋭で最後まで開発し続けてくれたのだと思う。

実は一番最後のSpecial Thanksに僕の名前が載っている。

実はこの辺のSteamリリースノートだったり、この頃のインゲームの日本語ローカライズは全て僕が担当している。

事の発端は2023年初頭、恐らくこの時期に元の日本語翻訳者が失踪してゲーム内の日本語訳がザ・機械翻訳みたいなとんでもないズタボロ日本語になっているのが我慢できなくて修正翻訳をWiple Gamesのコミュニティマネージャーに送ったところ、そこからボランティアとしてIronsightに関わるありとあらゆる日本語訳を担当することに。

無給ボランティアだしNDA契約を交わしているわけでもないが、流石に内部情報を公開するのも良くないと思うので簡単に説明すると、Googleドキュメントに翻訳単語だったり文章がズラーって並べられてるから、それを一つずつ翻訳して入力する感じ。
(何てラフな会話をしてるんだ。)
結局就活とかで2024年8月には翻訳作業に取り掛かれなくなったが、1年ちょっとお手伝いをさせてもらった。
それがあのSpecial Thanksの僕の名前と言うわけだ。
Special Thanks枠とは言え、人生で初めてエンドクレジットに自分の名前が載ったことはとても嬉しいし誇らしい。
このゲームには色んなものを貰った。

だからって最後の最後に俺の名前を間違えたのは普通に許してない。
ユーザー名をAにしていた俺も悪いけど、約1年間付き合ってそれは無いだろ。
人生で初めて「やりこんだゲームのサ終」を体験した。
終わってみるとあっけないが、このゲームは僕の青春そのものだった。
色んな人に迷惑かけたり、世界ランキングに載ったり、エンドクレジットに載ったり本当に色々あったが、総じてやっててよかったなとは思う。
ありがとうIronsight。